WordCamp Osaka 2019 に参加して

そもそも前回の投稿から、盛大に年月が流れているので、その間のことも触れないといけないのだが、そうすると肝腎の本題に入れないので、とりあえずスルーすることとする。


2019年12月7日、大阪工業大学で行われた、WordCamp Osaka 2019 のセッションデイを訪れた。
訳あって会場到着がギリギリになり、開会挨拶前のホールは客席照明が暗転してしまっていて、空席を探して着席するのにかなり苦労した。

今回私は結局、1コマ45分のセッションを6コマ(最後の基調講演を含む)と、5分のLT(ライトニングトーク)を5~6個聴き、予約していなかった懇親会には参加しなかった(諸事情により参加するどころではなかった)。
参加者が多く、特定のセッションに受講希望者が集中し、立ち見をする場所もなくなる場面がみられた。私の場合は2コマほどそのために第一希望の受講を断念して第二希望・第三希望の部屋に回り、他に1コマは最後部での立ち見を余儀なくされた。さらに1コマは個人のというより職場の事情を重視した選択をしたので、個人的興味の満足という点では、事前の期待感からの落差としての欲求不満が残ってしまった。
人気の薄いセッションがより広い部屋で行われてガラガラの場面もあったから、運営側が需要を読み損なった面もあるのだろうと思う。


(以下、時間のあるときに追記します)


そうこうするうちに、参加してから1ヶ月近く経ってしまった。今は年を越した正月休みである。
年末の仕事やら、私的な年賀状その他の準備やらを放置できず、体調もあまり優れなかったことで、こちらを保留していたのだが、業務なら完全にアウトである。

そもそも WordCamp が何かといえば、 世界最大シェアを誇るCMS・WordPress の、公式コミュニティのイベントで ある。大陸や亜大陸の名を冠したものから、都市名を冠したものまで、様々な規模で、世界各地で開催されている。日本ではこのところ、東京と近畿圏のどこかで少なくとも年各1回ずつと、それ以外のものが数か所、といったペースで開かれている。私はこのところ、近畿圏のものだけに、5年連続で足を運んでいる。

WordCamp の運営は、有志を募り、スポンサーを集め、一般参加者からも格安の参加費を集める形で行われ、スタッフは手弁当で、それぞれ忙しい中から時間を供出している。Webサイトや印刷物・掲示物のデザインなどは、各自在宅で連絡を取り合いながら進めるらしい。私自身は一般参加しかしておらず、スタッフになったことがないから、具体的なことは分からない。
ちなみに単に WordPress を利用するためには、こういうオフでの集まりに参加することは不要である。情報交換したり趨勢を知りたい、共同作業のための人脈を作りたい、開発や翻訳などの作業に貢献したい、普及や理念の啓蒙に努めたい、といった目的を持った人が自主的に集まるものである。
私自身、WordPress でのサイトを幾つも作った後で、WordCamp の存在を知った。実用のための情報は、Web上に説明文書があるし、書籍も何人もの人が書いている。

「セッションデイを訪れた」と上に書いたが、登壇者による講演・発表を聴講する形をメインとした日を「セッションデイ」と言っている。それに対し、参加者が開発や翻訳などの実作業を行う日を「コントリビューターデイ」と呼んでいる。
今回は、コントリビューターデイが金曜日だったこともあり、私はセッションデイだけの参加とした。


最初に聴いたセッションは、キタムラアイさんによる「 『タブレットファースト』になってない!から始まったWebサイトリニューアルのはなし 」であった。

私がサイトを作ったりリニューアルした時に、「タブレットファースト」にしたことはないし、タブレットは手放して久しいし、スマホやPCに比べてタブレットでの閲覧は少数派だという認識なので、何か新鮮な切り口の話が聞けるかと思って選んだ。

他にこの時間には、Takashi Hosoya さんによる「WordPressとkintoneを連携することで、毎年3,000件以上ある申込み業務を効率化した仕組みのお話」というセッションもあって、私の実務的には魅力的で、どちらも狭い会場だったので少し迷った。

キタムラアイさんのお話は、ブログのリニューアルに際して気を付けること、見落としがちなこと一般の話であった。
そもそもそういう見解を他人から聞くことも、普段ないことなので、ひとつの見解としては貴重な参考となった。
技術的に参考になったのは、「Local by Flywhieel」というローカル環境構築ツールに言及していたことだったが、これは後日職場の自分の環境を確認したところ、そのOSのバージョンが古すぎたために実際には使えなかった。
タブレットや画面の大きなスマホを使っている人が一定程度いることと、それが増大するであろうという予測以外に、「タブレットファースト」の根拠は聞けなかった。日用に使うのが通常のスマホで、業務上はPCという私の現在の使い分けが一般にも標準なら、「タブレットファースト」にする必要はないだろうと思う。


2つ目に聴いたのは、西川伸一さんによる「エンタープライズ向けにWordPressを提供するためにあなたとコミュニティができること」というセッションだった。

この時間のセッションで個人的に最も聴きたかったのは、関口浩之さんによる「FONTPLUSはWebサイト全面リニューアルでWordPressを採用! 日本語Webフォント10年間の歴史に迫る」で、私にとって、フォントの設計に携わるのも夢のひとつだったくらい、文字を見るためにこの業界にいるのだからである。
ところが、私が会場を覗いたときには、座席は全て人で埋まり、後方には立ち見の人が並び、さらに入りたい人たちが立ち位置を探している状態だったので、入室を断念した。

代わりに西川さんのセッションを選んだのは、業務上、社内リソース不足から小さな案件しか受注できず、中規模以上の案件への参入を断念してきたので、何かそれを解決するための糸口が見つかるかもしれないと思ったためである。そうであれば、業務にとってはこちらがより重要と思われた。

エンタープライズ案件を受けるために必要なスキル分野についてなどの 西川さんからの 説明は参考になり、また、「WordPressコミュニティには営業がいない」などの主張には賛同できたし、大きな心意気には打たれるものがあった。ただ結局、得意分野を持ち寄ってまとまって受注することを模索、という方針を出ず、私や勤務先には持ち寄って重宝がられるようなレアスキルがないので、具体的には何もできないな、という受け止めに終わってしまった。


昼食は、前々から入ってみたかった近隣のカレー店で済ませた。なんだかんだ言って、大阪は出身大学のある場所で、梅田は通学経路だったので、その名残で多少の土地勘はある。

食事後にホールに戻り、ライトニングトーク(LT)と称される短時間の発表を幾つか聴いた。
そのうちの1つは、「Lazy Load for Videos」という動画の遅延読み込みのプラグインについてで、実証的な発表だったので特に良かったと思う。


3番目に聴いたセッションは、Takeaki Kanaya さんによる「Google 検索最新情報 2020」だった。

「Google の人の話を聞けたのだから本望だったろう」と思われるかもしれないが、この時間に最も聴きたかったセッションも別にあって、それが三木徹さんの「Gutenberg 以降のテーマ作成に向けて、今学ぶべきこと」だった。
WordPress がバージョン 5.x に入ってから、標準のエディタ(管理画面での入力機能)が変更になり、それが Gutenberg である。入力できるものや構造がガラッと変わってしまうので、私は業務用の各サイトではその機能を切り、以前のエディタ(クラシックエディタ)を使い続けている。そして、新しいエディタへの対応を試行錯誤する時間が、作業時間をコストとみなされる職場では十分与えられない。以前のエディタは近い将来サポートを終了することが予告されているので、Gutenberg への対応は重要課題なのである。
そんな中、今回は、「5.x 時代に入ってから初の、関西でのWordCamp」だった。人が殺到するのは当たり前である。それなのに、狭い会場が割り当てられていたので、私が覗いたときには鮨詰め状態だった。それで仕方なく、まだしも入れそうな第2希望に移動したのである。

そして正直、この Google の SEO の話を聞くための準備を殆どしていなかったので、機会を十分生かすことができなかった。
ただ、「Site Kit」という、Google のサービスと WordPress を連携するプラグインだけは、業務でも実用するようにした。
幅広い話があり、特に後半は、客席に質問して正解なら記念品、そしてその設問について解説するという形で進めていたが、ここでは全て割愛する。


4つ目に聴いたセッションは、WordCamp デザインチームの皆さんによる「ライフスタイルに合わせて活動するWordCamp Osaka 2019 デザインチーム」である。

前の時間帯に、大きな会場の奥深くに座っていたため、移動が遅れ、この時間帯も競争に負けた。
最も聴きたかったのは、長谷川広武さんの「運用も最大限考慮!コーポレートサイトでブロックエディタフル活用の事例紹介」であり、第2希望は、Kyosuke Haraki さんによる「WordPressとWebマーケティングに出会って変わった3つのこと」であった。いずれも狭い会場だったので、私が前の会場を脱出した頃には席が完全に埋まってしまい、仕方なく第3希望だった元の会場に戻ったのである。

この話に期待したのは、私自身が WordCamp の運営に携わったことがないので、その実際を聞けるという点と、リモートでの分業のコツに何か得られることがあるかもというところだった。
デザインチームのメンバーは、全て女性だった。実際、本業や家族がいる中での作業は大変そうで、人によっては超ブラックレベルの過密日課になったり、そうすると十分な睡眠時間+日に1~2時間でも自由時間があると引け目を感じそうな印象であった。セッションの趣旨に反するが、私としてはそんな中に入るのは余計に腰が引けると感じてしまった。
リモートのやりとりは基本文字ベースの情報交換でうまく進んだようであったが、私はSNSでも何がマナーやエチケットなのかよく分かっていないので、それを聞いて安心していいのかどうか分からない。


5つ目に聴いたセッションは、土居安佳里(アカリホノカニ)さんによる「ブロックエディタで誰でもカンタンに運用しやすいサイトを作ろう!」であった。

これは第1希望なのだが、既に満席だったところ、最後部立ち見に何とか入り込んで聴講したものである。ブロックエディタとは、上に挙げた Gutenberg のことである。 Gutenberg 対応が最も気になって来場して、何一つ聞かないのは我慢できないから、ここは意地を通した。できれば、3枠目、4枠目を聴けた方が、自分には有益だったろうと思う。
ここにも入れない場合の第2希望は、レンタルサーバー会社各社の担当者による「レンタルサーバー事業者から見たWordPressコミュニティと今後の関わり」だった。

土居さんは「ブロックエディタを使わない理由がない」と Gutenberg 好きを広言する人で、私や私の同僚と大いに違う立場だ。私の何千倍・何万倍と Gutenberg を使ってきたであろう人なので、その見つけにくい機能・便利さの説明や、関連の関数の例示はためになった。
ただ、「ブロックエディタでは困る」という私や同僚の基本的見解は覆らなかった。少なくとも、HTMLブロックなどを選ばなくても、p要素にインライン要素を 投稿者が自由に入れ子で入れられる構造にしてもらわないと、ちょっと話にならない。


最後のセッション枠は、常翔ホールという大ホールで行われる1つだけである。
私も同時通訳の端末を借りて、ホールに移動し、Mike Schroder さんによる「The Future of WordPress」を聴いた。

キーになる単語や短文を大写しにしながら進めてくださったので、通訳さんも非常に大変なセッションだったけれども、何とか話の筋は追うことができた。あまりに何とかだったので、その筋をメモする余裕がなかった。
但し、結論は「WordPress の未来は、コミットしている我々次第」ということにならざるを得なかったので、「何だかなあ」というところである。

その後は、閉会までの間に、またライトニングトーク(LT)が2本ほど入った。


今回も懇親会が企画されていたが、私は予約せず、参加しなかった。
大勢での会話になると、私は誰が何を話しているのか聞き分けられず、自分の発言も届けたい相手に届けられない。居酒屋やホールのような所だと、文字通り、すぐ向かいや隣の人との会話も通じなくなる。 なので、疲れるだけでほとんど意味がないのである。
交流するなら、5~6名くらいまでの人数で個室に入り、アルコールや食事抜きで集中して話をさせてほしい。アルコールは全く飲まないし、食事は最低限の会話で静かに摂りたい。


今回のテーマは『 with __ 』ということだったけれども、託児所を用意したり、コントリビューターデイをいつもと違う平日にしたりした以外に、何かあったのか私は聞いていない。

セッションで言うと、「任意団体(特にPTA)で WordPress を活用する方法」「エンタープライズ向けにWordPressを提供するためにあなたとコミュニティができること」「The power of the events — offline magic for your WordPress business」「子育てしながら通勤・リモートワーク・フリーランス! きっかけを活かしWordPressで実現した複業という働き方」「ライフスタイルに合わせて活動するWordCamp Osaka 2019 デザインチーム」「ブロックエディタで誰でもカンタンに運用しやすいサイトを作ろう!」 「レンタルサーバー事業者から見たWordPressコミュニティと今後の関わり」は、テーマを意識していたものだったのかどうなのか。

ただ、私の関心は『 with __ 』には無かったなあ、と思う。関係ある関心領域と言えば、「何も知らない末端ユーザーにどうやって使い方を覚えてもらうか」というところか。複業もちょっと気になるけれど、お金にならないけどやりたい WordPress 以外のことがたくさんあって、どちらかと言えばそっちがライフワークなので、何だかですね。

全体的には、今回も12月ではあったけれど大盛会に見えたし、取り立てて混乱もなかったようだし、成功だったのではないかと思う。
2020年の近畿圏の WordCamp がどうなるのかまだ耳に入ってこないけれど、楽しみにしているし、私が何か関わってプラスになるなら関わりたいし、少なくとも足は運びたいというところだ。

WEB制作の敷居って高くなったのかなあ?

私が自分の個人サイトを始めたころは、Windows 95 のブームに乗って、インターネットへの参入者が急増した時期で、本当に、簡単なHTMLだけでも、コードを書いて公開するのが恥ずかしくない時代だったと思います。
けれど、今や、関連分野がどんどん細分化されて、HTML / CSS / JavaScript だけでは済まない様々な知識分野が生まれて、入門者がそう簡単には、「恥ずかしくない」WEBサイトを作れない状況になっていると思います。対応すべき端末のサイズなども増えました。サーバサイドプログラミングやセキュリティ関連知識の重要性も高まっているでしょう。私の考えでは、WEB関連知識を一通り学ぶだけで、大学4年間を全て費やしても、まだ足りないのではないでしょうか。
しかし他方で、ブラウザの標準化で、クロスブラウザの問題は以前より小さくなっています。また、ただサイトを公開すればいいだけなら、無料で簡単にバラエティ豊かなページを作れることを謳うWEBサービスも出てきています。さらに、制作を支援するソフトも進化を続けてきました。
それを総合して、果たして、WEB制作を始める敷居って、心理的に高くなったのかどうなのか?それが気になるところです。